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【完全版】混合物の分離法の見分け方まとめと練習問題3問の解説

分留

【練習問題】そもそも混合物の分離と精製の違いについて解説したうえで、「ろ過・蒸留・分留・再結晶・抽出・昇華法・クロマトグラフィー」という受験生が混乱しがちな分離法の見分け方をまとめ、具体例として入試問題を3問解説します。

ちなみに僕は10年以上にわたりプロとして個別指導で物理化学を教えてきました。

おかげさまで、個別指導で教えてきた生徒は1000名以上、東大京大国公立医学部合格実績は100名以上でして、目の前の生徒だけでなく、高校化学で困っている方の役に立てればと思い、これまでの経験をもとに化学の講義をまとめています。参考になれば幸いです。

大前提:分離と精製の違い

分離とは、混合物から目的の純物質を取り出す操作のことです。

精製とは、分離した物質から不純物を取り除いてその純度を高めることです。

ろ過とは

ろ過とはろ紙を用いて液体と固体の混合物から固体を分離する方法です。

例えば、

泥水を綺麗な水にする。
⇒砂が水に溶けた泥水から砂をろ紙で取り除くことで綺麗な水になります。

などです。

詳しくは、ろ過の仕方と実験の方法および注意点 を参照してください。

蒸留とは

蒸留とは溶液などの混合物を沸点の違いに着目して分離することです。

具体例は、

(1)塩化ナトリウム水溶液を枝付きフラスコに入れ、加熱して沸騰させると塩化ナトリウム水溶液中の水だけが水蒸気となります。その水蒸気を管で繋がれたリービッヒ冷却器で冷却すると純粋な水(蒸留水)が得られます。

(2)水とエタノールの混合物を枝付きフラスコに入れ、過熱して沸騰させるとエタノールの沸点が低いためほぼエタノールだけが気体となります。それを管で繋がれたリービッヒ冷却器で冷却するとほぼ純粋なエタノールが得られます。

などです。

詳しくは、蒸留と分留の違いと覚え方を具体例と図で解説 を参照してください。

分留とは

分留とは分別蒸留の略称で、3種類以上の混合物を沸点の違いに着目して順に蒸留し分離することです。

例えば、石油は発掘された状態では様々な液体が混ざりあっており、分留を行うことで石油ガスやナフサ、灯油、軽油などに取り分けられています。

詳しくは、蒸留と分留の違いと覚え方を具体例と図で解説 を参照してください。

再結晶とは

再結晶とは、溶解度の差を利用して固体どうしの混合物を分離する方法です。

固体の溶解度とは溶媒(液体)100gに溶け得る最大の質量のことです。物質の溶解度は温度により変わるため、このときの溶解度の差を利用して物質を分離します。この方法で析出させ取り出す事ができる物質は、温度によって溶解度が大きく異なる物質です。

詳しくは、再結晶とは?原理や方法を実験例とともに解説 を参照してください。

 抽出とは

抽出とは溶媒によって溶解度が違うことを利用して分離する方法です。

抽出に用いる溶媒は、分離させたい物質のみをよく溶かしそれ以外の物質はできる限り溶かさないものを選択します。

詳しくは、抽出とは?実験などの具体例をもとに原理の解説 を参照してください。

昇華法とは

昇華法とは昇華し易さの違いを利用して、昇華性物質とそうでない物質を分離する方法です。

具体的には、混合物を加熱して昇華性の物質を気体にすれば分離できます。例えば、砂とヨウ素の混合物をビーカーに入れて加熱すると、砂は状態変化しませんが、ヨウ素は昇華し気体となるので、生じた気体を冷却すれば純粋なヨウ素の結晶(固体)が得られます。

詳しくは、昇華法とは?実験などの具体例をもとに原理の解説 を参照してください。

クロマトグラフィーとは

クロマトグラフィーとは、物質の吸着力の差によって分離する方法です。

詳しくは、クロマトグラフィーの種類と原理を実験例で解説 を参照してください。

練習問題

練習問題1(2014年 旭川大)

次の物質の分離に用いられる最も適切な方法を〈語群〉から記号で 1 つ選べ。

① 石油を加熱し,沸点の低い順にガソリン,軽油,重油などに分離した。
② サラダ油の中に食塩が混入したので,ろ紙を使って食塩とサラダ油を分離した。
③ 砂の中にヨウ素の固体が混合したので,ステンレス皿に入れて加熱し,冷水を入れたフラスコをかざして,フラスコの底にヨウ素の結晶を分離した。
④ 海水から水をとりだした。
⑤ 食塩水から食塩をとり出した。
⑥ 少量の塩化ナトリウムを含む硝酸ナトリウムから硝酸ナトリウムをとり出した。

〈語群〉
ア .  蒸発乾固  イ .  昇華  ウ .  再結晶  エ .  分留
オ .  ろ過    カ .  蒸留  キ .  吸着

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【解答】① エ  ② オ  ③ イ  ④ カ  ⑤ ア  ⑥ ウ

【解説】
① 3種類以上の混合物を沸点の違いに着目して順に蒸留し分離しているので分留です。

② ろ紙を使って固体と液体を分離しているので、ろ過です。

③ 昇華しやすいヨウ素と状態変化しない砂の混合物から昇華を利用して分離しているので、昇華法です。

④ 水と塩化ナトリウムなどの固体を沸点の違いにより水を蒸発させたうえで凝縮し純粋な水を得る方法なので蒸留です。

⑤ 蒸発させれば水分が飛び、食塩のみが残るため、蒸発乾固です。

⑥ 溶解度が温度により大きく変化する硝酸カリウムと、温度によりほとんど変化しない塩化ナトリウムを分離するので、再結晶です。

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練習問題2(2011年 倉敷芸術科学大)

次の(1)~(5)の混合物からそれぞれ指定された物質を取り出すには,下のア ~ カのどの操作を行うのが最も適当か。それぞれ1つずつ選べ。

(1) 炭酸カルシウムの沈殿を含む水溶液から,炭酸カルシウムの沈殿を取り出す。
(2) 砂を含むヨウ素から純粋なヨウ素を取り出す。
(3) 少量の塩化ナトリウムを含む硝酸カリウムから純粋な硝酸カリウムを取り出す。
(4) 植物の緑葉から葉緑素(クロロフィル)を取り出す。
(5) 海水から純水を取り出す。

ア .  ろ過    イ .  蒸留   ウ .  昇華   エ .  抽出
オ .  再結晶   カ .  クロマトグラフィー

[su_spoiler title=”【解答解説2】※タップで表示” style=”fancy”]
【解答】(1)  ア   (2)  ウ   (3)  オ   (4)  エ   (5)  イ

【解説】

(1) 溶液から沈殿物を分離する操作はろ過です。

(2) 昇華しやすいヨウ素と状態変化しない砂の混合物から昇華を利用して分離しているので、昇華法です。

(3) 溶解度が温度により大きく変化する硝酸カリウムと、温度によりほとんど変化しない塩化ナトリウムを分離するので、再結晶です。

(4) 特定の成分だけを溶かす溶媒で溶かし出す操作を行うので抽出です。すりつぶした葉っぱにエタノールを加えてさらにすりつぶしエタノールで抽出するという方法です。知識問題ですね。他にはコーヒーや紅茶などが出題されることもあります。

(5) 水と塩化ナトリウムなどの固体を沸点の違いにより水を蒸発させたうえで凝縮し純粋な水を得る方法なので蒸留です。

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練習問題3(2010年 愛知工業大)

次の分離操作 (ア)~(カ)に最も適した方法は,下の(a)~(f)のどの操作を行うのが最も適当か。それぞれ1つずつ選べ。

(ア) 海水を加熱して発生した水蒸気を冷却して,純粋な水を得る。
(イ) 植物の葉からクロロフィル ( 葉緑素 ) をとり出す。
(ウ) 原油からその成分の沸点の違いを利用して,石油の精製を行う。
(エ) インクに含まれるいろいろな色素を分離する。
(オ) 少量の塩化ナトリウムを含む硝酸カリウムから硝酸カリウムだけをとり出す。
(カ) 白濁した石灰水から透明な石灰水をつくる。

(a) ろ過  (b) 再結晶  (c) 蒸留  (d) 分留  (e) 抽出  (f) クロマトグラフィー

[su_spoiler title=”【解答解説3】※タップで表示” style=”fancy”]

【解答】(ア) c (イ) e (ウ) d (エ) f (オ) b (カ) a

【解説】

(ア) 水と塩化ナトリウムなどの固体を沸点の違いにより水を蒸発させたうえで凝縮し純粋な水を得る方法なので蒸留です。

(イ) 特定の成分だけを溶かす溶媒で溶かし出す操作を行うので抽出です。すりつぶした葉っぱにエタノールを加えてさらにすりつぶしエタノールで抽出するという方法です。他にはコーヒーや紅茶などが出題されることもあります。

(ウ) 3種類以上の混合物を沸点の違いに着目して順に蒸留し分離しているので分留です。

(エ) インクの色素ごとに吸着力が異なりますのでクロマトグラフィーで分離します。

(オ) 溶解度が温度により大きく変化する硝酸カリウムと、温度によりほとんど変化しない塩化ナトリウムを分離するので、再結晶です。

(カ) 溶液から沈殿物を分離する操作はろ過です。

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さいごに

各分離法が単品で出題されることはほとんどないので、本記事の練習問題を自力で解けるよう、お気に入りに保存するなどして、何度も復習してみてくださいね。

なお、僕がこれまで1000名以上の個別指導で、生徒の成績に向き合ってきた経験をもとにまとめた化学の勉強法も参考にしてもらえれば幸いです。

また、本記事をググってくださったときのように、参考書や問題集を解いていて質問が出たときに、いつでもスマホで質問対応してくれる塾はこれまでありませんでした。

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