蒸留と分留の違いの間違えた説明がネット上に散見されます。本記事では、正しい蒸留と分留の意味と違いをシンプルに、かつ図や例を示しながら解説します。また、蒸留の実験の注意点と理由も図で解説します。さらに、参考となる動画で理解も深めましょう。
ちなみに僕は10年以上にわたりプロとして個別指導で物理化学を教えてきました。
おかげさまで、個別指導で教えてきた生徒は1000名以上、東大京大国公立医学部合格実績は100名以上でして、目の前の生徒だけでなく、高校化学で困っている方の役に立てればと思い、これまでの経験をもとに化学の講義をまとめています。参考になれば幸いです。
蒸留とは
蒸留とは溶液などの混合物を沸点の違いに着目して分離することです。
具体例は、
(1)塩化ナトリウム水溶液を枝付きフラスコに入れ、加熱して沸騰させると塩化ナトリウム水溶液中の水だけが水蒸気となります。その水蒸気を管で繋がれたリービッヒ冷却器で冷却すると純粋な水(蒸留水)が得られます。
(2)水とエタノールの混合物を枝付きフラスコに入れ、過熱して沸騰させるとエタノールの沸点が低いためほぼエタノールだけが気体となります。それを管で繋がれたリービッヒ冷却器で冷却するとほぼ純粋なエタノールが得られます。
参考となる実験の動画をご紹介します。
【頻出】蒸留の実験の注意点
注意点は以下の通りです。
① 温度計の球部は「フラスコの枝分かれの位置」にする必要があります。
その理由は、沸騰している液体の温度を知りたいのではなく発生した気体の温度が知りたいからです。
② 冷却水はリービッヒ冷却器の「下から上」に流します。
その理由は、上から下に流すと水が溜まりづらく冷却効率が悪くなってしまうからです。
③ 試料(溶液)の量は枝付きフラスコの半分以下にします。
その理由は、試料(溶液)を入れすぎると沸騰した際に試料が枝側に入りリービッヒ冷却器の方に混入してしまうからです。
④ 加熱する際は「沸騰石」を入れる必要があります。
その理由は、突沸(液体が沸点になっても沸騰せず、わずかに刺激を与えた時に急激に沸騰する現象)を防ぐためです。このとき試料(溶液)が噴き出したり容器が破損する恐れがあるからです。
⑤ アダプターと受け器は密閉してはいけません。
その理由は、アダプターと受け皿をゴム栓やガラス栓で密閉してしまうと、装置内の圧力が上昇し、器具を破損する可能性があるからです。ただし、外部から異物が混入しないようアルミホイルなどで受け器の口を軽く塞ぐ必要はあります。
⑥ 蒸留の始めに生成した液体と終わりに生成した液体は捨てる必要があります。
その理由は、始めと終わりの液体は不純物を含む可能性が高いからです。
分留とは
分留とは分別蒸留の略称で、3種類以上の混合物を沸点の違いに着目して順に蒸留し分離することです。
出典:https://www.okachi.co.jp/market/commodity/domestic/tokyo_oil/picture.html
例えば、石油は発掘された状態では様々な液体が混ざりあっており、分留を行うことで石油ガスやナフサ、灯油、軽油などに取り分けられています。
純粋な窒素や酸素などの気体を得たい場合も液体空気の分留を行います。窒素や酸素など様々な成分が含まれた空気を冷却し液体にした後、それぞれの沸点の違いを利用して順に蒸留し分離します。
蒸留と分留の違いと覚え方
蒸留という大きな枠組みの中に分留があります。
分留はそもそも分別蒸留の略称で、英語では蒸留がdistillationに対し、分留はfractional distillationと言います。fractionalは分別を表します。
つまり、蒸留とは沸点の違いに着目して分離することの総称で、分留はたくさんの混合物を順番に蒸留していき分別していくことです。
※よく蒸留は固体と液体、分留は液体と液体という説明を見かけますが、明らかな間違いです。
具体例を考えれば、よりイメージが沸くでしょう。
ワイン(水+エタノール+その他)について
80℃くらいになるように穏やかに加熱していくと、ワインの中のエタノールが蒸発し、これを冷やしてエタノールを取り出せます。(蒸留)
エタノールが出尽くした後、さらに温度を上げると今度は水が蒸発し、これを冷やして水を取り出せます。(蒸留)
このように、沸点の少し違う物質が混合しているとき、温度を調節しながら沸点の低いものから順に蒸留していけば、何種類かの液体を分別することができます。
このような操作全体が「分留」です。
さいごに
蒸留と分留の違いは理解できましたか?
とはいっても、正直なところ3か月後には忘れている人が99%なんです…。
適切なタイミングでの復習があなたの学力を高める最大の味方です。つまり、勉強法が正しくないと、なかなか成績には結びつかないということです。
僕がこれまで1000名以上の個別指導で、生徒の成績に向き合ってきた経験をもとにまとめた化学の勉強法も参考にしてもらえれば幸いです。
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