化学の成績が思うように伸びないなあ…。成績アップの秘訣ってないのかなあ…。最短で成績を上げられる勉強法が知りたいな。
このような疑問に答えます。
本記事では、化学の勉強法について解説します。
僕は10年以上にわたりプロとして個別指導で物理化学を教えてきました。
おかげさまで、個別指導で教えてきた生徒は1000名以上、東大京大国公立医学部合格実績は100名以上でして、個別指導は特に生徒一人一人の成績と向き合うため、成績の上げ方、上がるタイプの生徒、上がらないタイプの生徒についてとことん研究してきました。
すべての学習において重要なことですが、参考書を読むだけ、授業を聞いているだけで成績が上がるということはまずあり得ません。
これまでの経験上、成績を上がるためには、以下の3つの要素が必要です。
- 単元の理解
- 十分な問題演習量
- 放っておいたら忘れるので適度な復習
化学の場合は暗記も重要なので、ここに英単語を覚えるのと同じで「暗記」という要素も加わります。
これからお話していく内容ですが、
まずは基本的な勉強のやり方を解説したうえで、各分野ごとの注意点について話をしていきます。
化学勉強法の前に:脳の仕組みを知って効率的に学習しよう
エビングハウスの忘却曲線
何度も繰り返し復習するようにしているけど、テストでなかなか思い出せないよ…。
無意味な10個の単語を覚えてもらい、それらをどれくらい長く覚えているか調べてみる実験が過去に行われていて、語を忘れる速度は人によってほとんど違いがないことがわかっています。一般には、次のような曲線を描きます(これを「忘却曲線」と呼びます)。初めの4時間で半分くらい忘れてしまい、そして、そのあとは平らに近いカーブを描きます。
http://s-park.wao.ne.jp/archives/1962
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脳科学を専門とする東京大学の池谷 裕二教授によれば、「短期記憶」をつかさどる海馬という脳の中の部位が”必要と判断”したら、長期記憶をつかさどる大脳皮質に送られ、記憶が定着します。
つまり、海馬に重要な情報だと思ってもらうことが大切なのです。
そのためにも勉強を反復することで、海馬に重要な情報だと思ってもらうことが大切です。
しかし、やみくもに復習するのではなく、復習のタイミングが重要です。
潜在的な記憶の保存期間は1か月と考えられているので、その間に復習することが大切です(海馬は1か月かけて情報を整理整頓していると考えられています)。具体的には、学習した翌日に1回目、その1週間後に2回目、2回目の復習から2週間後に3回目、さらに3回目の復習から1か月後に4回目――このように少しずつ間隔をあけ、2か月かけて復習すればいいでしょう。
http://s-park.wao.ne.jp/archives/1962
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この復習タイミングは学習計画に織り込むのがベストですが、なかなか自分で計画をたてていくのは困難だと思います。
そんな場合は、プロに計画を立ててもらえるサービスを活用すると良いです。
予備校なら駿台、家庭教師ならノーバスです。この2つは経験を積んだプロが学習サポートをしてくれます。
教科書を繰り返し読むより
問題を解くことで学習効果が高まる
繰り返し参考書を読んで、ノートに書いてるけど、テストでなかなか思い出せないよ…。
脳にはいろいろな情報が入ってきます。しかし、そのすべてを覚えておくことはできません。当然、取捨選択しなくてはいけないわけですが、このとき、入力の回数だけでなく出力の回数(使用頻度)でも判断しています。むしろ、脳は出力のほうにより依存している。ですから、教科書や参考書よりも問題集を何度も解く復習のほうが効率的だ、といえます。
http://s-park.wao.ne.jp/archives/1962
同じく、池谷教授によれば、参考書を繰り返し復習するよりも、問題集を繰り返し解いて復習することのほうが効率的だとのこと。
「授業を聞く」「参考書を読む」といった知識を頭に入れていくインプットも大切なことですが、それよりも重要なのは、実際に「自分の頭で考えて問題を解いていく」というアウトプットの量が大切だということです。
大きく全体像を覚えて、そのあとに、細かいことを全体像に関連させて覚えていけば、記憶に残りやすい(連合性)
前知識を持っていると物事を覚えやすいのも記憶の連合性が働きます。たとえば車の車種を覚える場合、車に興味のある人とまったくない人では「入りやすさ」が全然違う。車に興味がなくて、車の知識もない人は丸暗記するしかありません。しかし、車が好きで前知識がある人は「去年のプリウスはこういう形だったから、ここをマイナーチェンジしたんだ」とすっと頭に入ってくる。記憶力はその人が持っている過去の情報量に左右されるのです。事前情報が多いほど関連付けて覚えられるので、記憶が楽になるわけです。
https://president.jp/articles/-/12018?page=3
同じく池谷教授の言葉ですが、要するに、予備知識がある状態を先に作っておき、そのうえで細かい知識をつけていく学習方法は有益だということです。
そのため、化学の勉強法でいえば、問題集を前から順番にやっていくのではなく、まずは印のついた問題だけ先にすべてやってしまい、そのあとに印のついていない問題をやっていく、といった勉強法のほうが成績が上がりやすいということが言えます。
化学勉強法【間違いだらけの勉強法】
以上のことを踏まえると、自分がいかに間違えた勉強法をしていたか、と思った人もいると思います。
間違った勉強とは
- 参考書を繰り返し読んで覚えようとする
- 授業を聞いただけで勉強した気になっている
- まとめノートをつくる
- 問題集をひたすら前から順番に解いていく
- 勉強した内容をその日すぐに復習する
- 1回しか復習しない
上の脳科学の話に基づいて考えれば、上記のどれも間違った勉強法だということがわかるはずです。
簡単に訂正すると、以下です。
- 参考書を繰り返し読んで覚えようとする ⇒ 問題を解くほうが大事
- 授業を聞いただけで勉強した気になっている ⇒ 問題を解くほうが大事
- まとめノートをつくる ⇒ 問題を解くほうが大事
- 問題集をひたすら前から順番に解いていく ⇒ 印のついた問題だけ一巡してから残りを解くほうが効果的
- 勉強した内容をその日すぐに復習する ⇒ 翌日以降の復習のほうが効果的
- 1回しか復習しない ⇒ エビングハウスの忘却曲線より、くりかえし復習が必要
以上を踏まえて、実際どのような手順で化学の勉強を進めていけばよいのか解説していきます。
化学勉強法【前提】
化学という科目は、数学や物理のように論理や計算が多いわけでもなく、生物や社会のように暗記が中心というわけでもない、中間的な性質の科目です。
つまり、暗記するべきところはしっかりと暗記し、計算分野は基本事項を理解して繰り返し練習することが必要だという前提を押さえておいてください。
そのうえで、インプットの方法、アウトプットの方法を理論化学・無機化学・有機化学の分野ごとに勉強法をまとめていきます。
化学勉強法【インプット編】
理論化学のインプットの方法
最も大切なことは、絶対に暗記しないといけないことと、暗記せずに考えて導くことの区別をつけておくことです。
例えば、酸化還元であれば、
過マンガン酸イオンがマンガンイオン(II)になるということだけを覚え、半反応式の書き方と酸化剤還元剤の半反応式の合成の仕方を理解しておけば、自分でつくれます。
このことが分かっていないと、酸化還元の化学反応式を全部覚えようとしたり、なんとなく半反応式を丸覚えしてしまったりと、全くもって非効率な勉強となってしまいます。
そのため、どのような参考書であれ、塾の授業や映像授業であれ、何が覚えるべきことで、何が覚えずに考えて導くことなのかを分別しながら学ぶことが大切です。「労力は最小限に」です。
あとは、参考書や映像授業を何度も繰り返し見ないようにすること!!
そんな時間があったら、アウトプットしましょう。問題集を解きまくりましょう。
その中でわからないことや、考え方そのものを忘れてしまっている単元が出てきたときに参考書を振り返るほうがはるかに効率的です。
参考書や問題集で勉強したい方は、推奨の参考書をご確認いただければ幸いです。
無機化学のインプットの方法
無機化学はひたすら暗記項目が多い分野です。
例えば、沈殿の色や溶液の色、合金など丸暗記するしかないものも数多く存在します。そのため、英単語を覚えるかのようにひたすら復習して覚えていくことが必須となります。
(もちろん「なぜ」を理解しておいたほうが良い部分もあり、例えば、濃塩酸に塩化マンガンを反応させる話だったら、水と濃硫酸を通す理由や、その順番の理由は答えられないといけないところではあります。)
英単語は単語帳で覚えるので、同じように化学の暗記部分も単語帳のように覚えることが必要だと思っています。
そういう意味で市販でおすすめの参考書は、大学受験Doシリーズ 福間の無機化学の講義 四訂版です。別冊まとめがついていて、これで暗記するのが良いと思います。
詳しくは以下にて解説しています。
もちろん暗記だけでなく、理屈の理解も大切なので、理論をしっかりと学習してから無機化学を勉強しないといけません。
有機化学のインプットの方法
有機化学は、構造決定の問題を解けるようにすることが最大の課題です。
構造決定の問題とは、何かわからない有機物Xがあって、ヨウ素を加えて加熱したり、金属ナトリウムを加えてみたり、といろいろやったときに起こった現象から、元の物質Xが何だったのかを求める問題です。
参考書や授業で各官能基について学ぶときって、
「アルコールは、金属ナトリウムと反応して水素が発生します。」
と習います。
しかし、構造決定では逆です。
「金属ナトリウムと反応して水素を発生した。」という文章からアルコールだな、と推定しなければいけません。
そのため、参考書や授業で学んだだけではダメで、問題演習を通して、いろんなパターンの引き出しを作っておくことが最も重要です。
おすすめは、問題演習をするたびに参考書や授業ノートなどに立ち返って確認することで、記憶が紐づいていきます(脳の連合性)ので、特に有機化学の場合は、問題を解いて間違えるたびに参考書の該当箇所を振り返ることをおすすめします。
また、絶対に気を付けないといけないのは、示性式で覚えるのではなく、構造式で覚えていくこと。
例えば、「第一級アルコールが酸化したらアルデヒドになって、さらに酸化してカルボン酸になる」と丸覚えするのではなく、実際に構造式でHをとったり、Oをつけてみたりと書きながら覚えるほうが良いです。
化学勉強法【アウトプット編】
まずは全単元共通して言えることですが、
受験勉強の場合(ひととおり単元学習自体は終えている状態)、問題集を前から順番にやっていくのではなく、各分野を1問ずつ同時進行で進めていくことをおすすめします。
なぜなら、理科の受験勉強における最大の敵は「忘却」だからです。
これまでの経験上、浪人生も含め、ほとんどの受験生は、理論をやってたら有機を忘れ、有機をやってたら無機を忘れ、無機をやってたら理論を忘れ、、、となってしまいます。
これは能力値に関係なく起こることです。実際、京都大学の医学部に合格した元教え子も、高3の受験生のときに同じ悩みをぼやいていました。
冒頭で解説した忘却曲線という観点から考えても、各分野を同時進行で進めていく問題集の解き進め方は非常に合理的だと考えていて、実際に僕の教え子の受験生にはそのような方法で進めるように毎年指示をしています。
ただし、この同時進行のデメリットがひとつだけあります。
それは、「単元をひとつひとつ終わらせていく達成感を感じにくい」ということです。
単元をひとつひとつ完成させていく従来の問題集の進め方は、達成感を感じやすく、一時的にその単元に強くなり、成長した感覚を覚えやすいです。
しかし、その感覚は錯覚で、どうせすぐに忘れてしまい、その分野の復習に戻ってきたときには、きれいさっぱり忘れているということになりかねません。
そのため、同時進行のほうが遠回りに見えて実は近道なので、ぜひ実践してみてください。
それでは、各分野のアウトプット時の注意点について解説していきます。
理論化学のアウトプットの方法
理論化学のほとんどの問題は典型問題です。
同じようなパターンの問題ばかりが形を変えて出題されています。
例えば、電離平衡の単元の「緩衝溶液」の問題は、実際のところ、3パターンしかありません。
「緩衝溶液自体のpHを求めるタイプ」「緩衝溶液に酸を少し加えたときのpHを求めるタイプ」「緩衝溶液に塩基を少し加えたときのpHを求めるタイプ」の3つです。
それぞれの解き方のパターンを自分で解けるレベルまで習熟しておくことが必須となります。
無機化学のアウトプットの方法
無機化学については、大学受験Doシリーズ 福間の無機化学の講義 四訂版の別冊まとめのようなもので一度覚えて、それをアウトプットで確かめるような問題演習がもっとも効果的です。
そのため、参考書や授業で理解⇒別冊まとめで暗記⇒問題集で覚えられているか確認
という手順で学習すると最も効率的に学習できます。
有機化学のアウトプットの方法
まずは大学受験Doシリーズ 鎌田の有機化学の講義 四訂版の別冊まとめのような、暗記事項がまとめられているものである程度で良いので、ひととおり覚えましょう。
そのうえで、問題集を解きながら、間違えたところ、覚えきれていないところを参考書などに立ち返りながら復習します。
インプットでもお話したとおり、構造決定は、覚え方と実際の使い方が逆方向になっているので、これはもう訓練しながら引き出しを増やしていくしかありません。
化学勉強法【学習計画編】
こちらの記事に記載しました問題集がおすすめです。
基本的な計画の立て方は以下です。
英単語のように何度も繰り返し覚える習慣をつけましょう。英単語はやるのに化学はやってない方が多いです(泣)
間違えた問題には必ず印をつけておき、期間をあけながら再度復習で解きなおしをする。理解が不足していると感じたところは参考書や授業内容に立ち戻って確認する。
基礎レベルの問題集の復習も行いながら、応用レベルの問題集に入っていきます。
その際、理論・無機・有機の各分野を同時進行で進めていきます。
重要問題集をやる場合なら、「必解」というマークがついているので、まずは「必解」だけ全体を通して解いてから、必解じゃない問題に取り組む、というやり方もおすすめです。
同じく間違えた問題にはチェックを入れ、基礎レベルの問題集の類似問題を解いてみるなどの工夫があると、より効果的な学習が可能です。
必ず時間を計りながら解いていきます。
そして、間違えた問題はすべて解説を見て理解するだけでなく、参考書に立ち戻って復習することで記憶が定着しやすくなります。
あとは、これを学習スケジュールに落とし込みながら、そして日々調整しながら進めていくことになります。
学習スケジュールを立てたり、進捗管理に割く時間がもったいないとか、そもそも立てるのが苦手、という方は、
そのあたりを手厚くサポートしてくれるところも出てきだしています。
僕が調査していて、良いなと思ったのは、
予備校なら駿台、家庭教師ならノーバスです。ノーバスはオンライン家庭教師もやっているので、地域にかかわらず受けられるサービスです。
ちなみに駿台は、manaboというオンラインサービスを導入しており、いつでもスマホで質問対応ができるので、質問対応力は塾予備校業界で2021年現在、最強だと思います。
参考書が苦手だけど、予備校などは事情があって難しい場合は、映像授業のスタディサプリは学習管理をしてくれるサービス「合格特訓コース」がありますので、こちらも検討してみてもいいかもしれません。もしくは、AIを活用した映像授業の河合塾Oneも同じくサポートのコースがあります。
自分で学習計画を立てられるのなら、そのほうが良いと思いますが、
学習計画を立てずにやるのは論外ですので、ご注意ください。
つい自分に甘くなってしまう方も、管理してもらったほうが良いかもしれません。
自分に甘い人は、将来的には克服したほうがいいとは思いますが、大人でも自分に甘い人がほとんどです。笑
自分が志望校合格をつかむにはどうすればよいかをご家庭で話し合い、最終的には自分の意志を強く持って一歩ずつ踏み出していきましょう。